Day_42: 人口と災害【3】:人口研究とアジア[Japanese]

災害に関する人口研究の重要性

William Donner and Havidan Rodriguez(2008)は、気候変動より、人口変動による将来の自然災害によるリスクの重要性を指摘している。現実問題として、将来の気候変動による災害に対する影響などは、IPCCなどの主導による研究に代表されるように多くの研究成果が主に自然科学者などにより実施されているが、人口の変動による将来の災害に対する影響の研究は、指標研究を含めてほとんど語られていないのが現状であり、課題となっている。

アジア地域の脆弱性

Munich Re(ミュンヘン再保険会社)によるデータによれば、1980年から2014年における、アジア、アフリカ、北・中央アメリカ、南アメリカ、オーストラリア/オセアニアに分類した世界全体の地域別自然災害のうち、アジアの占める割り合いは、死者数で、69%、経済損失で40%に及び、最も脆弱な地域であることを示している。また同時にアジアは、沿岸部への人口の集中とともに、高齢化が特に進んでいる地域でもある(大泉 2007)。これらは、アジアにおける自然災害に対する脆弱性は今後ますます高まると言っても過言ではない。将来気候変動が叫ばれるなか、さらに日本では、南海トラフや首都直下地震、さらには、2016年の熊本地震で示されるように、いつどこで起こってもおかしくない地震をはじめ、ハザードの側面、及び、進む少子高齢化など社会的脆弱性の側面、両面からリスクは増加する傾向にあるといってよい。それらのリスクへの対応としては、ハザードすなわち自然現象に対するアプローチは主に工学や自然科学分野で多くなされているが、社会的脆弱性という意味での少子・高齢化などによるリスクへの影響に関する研究は、今後の災害対策を考えるうえでも益々重要な位置づけとなるだろう。