Day_31 : 人口と災害【2】[Japanese]

人口と災害について、指標研究では、社会脆弱性指標、リジリエンス指標が中心課題となっている。社会脆弱性指標については、サウスカロライナ大学のカッター*などが先駆的で大きな貢献をなしてきた。その社会脆弱性指標の延長として近年数多くの成果が出されてきているのがリジリエンス指標研究である。どちらの指標研究も基本は、Wisnerら(2004)のPressure and Release(PAR)モデルが理論的な下敷きになっており、リスクを、Risk(リスク)=H(ハザード)× V(バルナラビリティ)で考え、リスクは、ハザードとバルナラビリティの重なった部分ととらえる。ハザードには自然現象(例えば降雨量)が、バルナラビリティには社会的な条件が当てはまり、このバルナラビリティに関しては、地域の暴露人口、高齢化率、男女比、識字率、さらには所得などの統計データを用いることによって指標化が可能となる。リジリエンス指標については、教育レベルや収入等より長期的な視点を含めた変数を加えたものである。GISなどの技術の進歩とともにこれらの結果が地図上に落とし込まれ地域毎の社会的脆弱性、リジリエンス、及びリスクが可視化されるようなり、指標研究が進んだ。 これらの指標研究は、実用的な研究としても多くの防災・災害研究者が取り組んでいる。ただ、国や地域により、災害や各種統計データに格差があることや、実際の災害による妥当性の検証などの問題を常に抱えていることも確かである。これらの問題の対応として、ターゲッ地域へのフィールド調査による質的な情報を組み合わせる指標への試みもなされてきている。

*スーザン・カッター サウスカロライナ大学(米国) ハザードと脆弱性研究所教授・. 所長

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