防災科学技術研究所 自然災害情報室のメールマガジン*第7号の記事を転載致します。
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先日、文化と災害対応について、面白い論文を見つけました。それは、オハイオ大学のロバート・ロス氏による論考です。1970年のかなり古い研究ですが、大変興味深く感じました。ロス氏は、自然災害の対応に影響を与える要因として地域の、宗教、技術、そして、特に自然に対する文化的価値観をあげ、それらが、その国々の制度のより中央集権型か地方分権型かという部分と相互作用するとしています。具体的には、東アジア、西欧、ラテンの国々の比較を行っています。
例えば、東アジアの国々の災害対応は、西欧、ラテンアメリカに比べて宗教や技術の部分は相対的に低く、自然と調和することに重きをおく文化的価値観が大きく作用する。また中央集権的であまり分権化していないことも影響するとしています。一方、西欧の国々の災害対応は、ラテンアメリカや東アジアに比べて宗教的影響、技術は高く、自然を征服するという文化的価値観が働いているとし、それらが、地方分権型システムに作用するとしています。最後に、ラテンアメリカの国々の災害対応は、宗教的影響及び技術は中間とし、自然に対しては服従する文化的価値観が働くとし、比較的中央集権型システムと相互作用するとしています。
かなり大雑把な分析で、現在に当てはまらないと思われる部分も多くありますが、解釈の仕方によっては、いろいろと考えるヒントを与えてくれます。例えば、2005年に起こったハリケーン・カトリーナ災害では、政府の対応が、うまくいかなかったと批判されていますが逆に、そのことが、コミュニティの災害対応の差を際立たせた側面があるようです。特に、ニューオリンズのアジア系コミュニティ、ラテンアメリカ系コミュニティ、そして西欧系コミュニティの災害前後の災害対応の違いがはっきりしたといわれています。
コミュニティ単位で、ロス氏の考察を当てはめて考えると興味深いものがあります。
*防災科学技術研究所 自然災害情報室メールマガジン
自然災害情報室